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蛙声爺の言葉の楽園

. もの思いの秋の中で


 やっと大自然が静かになりました。
 そんな気になったのは、25号が列島から遠のいて台風という名前を捨ててからです。
 タオルケットを掛けて寝ていた日々が、夏掛けとはいえ布団に変わったときから、あれほど寝不足に陥っていた自分が熟睡できるようになりました。それでも「眠っている」我が身の器官があります。短期記憶をつかさどる前頭にある海馬です。しだいに勢いを増していく忘却力。さらには忍び寄ってくる認知症の恐怖。
 朝、目覚めるとひそかにホッとしています。まだ、昨日までの自分だと。

 長編と短編を書き終えた後に襲ってきた、何をするでもなく、何が出来るわけでもない毎日。時折、誰か小さな畑を貸してくれないかななどと非現実的な妄想に陥ります。土を耕し種をまき、あるいは苗木を植えて育てる。体を動かすことも然ることながら、植物の生長を見つめ続けることは、老いた心にも健康をもたらすに違いありません。しかし実際は狭い部屋に身を閉じ込めて日暮れを待つことになってしまいます。
「さて、また挑むか」と自ら励まし始めるのはそんなときです。

 海馬が衰えると、新しい資料を記憶し、それが最重要な作品は創れなくなります。まったく不可能とは言えませんが質的なことを考えれば挑める分野ではありません。高齢になり現役を退いたら一筋にと想い続けていた小説『疎石と虫』を諦めた理由がそれでした。書籍以外にネットで集めたプリント資料だけでも厚さ5センチに達していました、まさに夢のテーマでした。造園の才にも恵まれていた高僧で国師でもあった夢窓疎石と当時虫けら同然の地位でしかなかった庭造り現場の男たちとの心の交流を描こうとしていた記憶があります。いわば『小説太田道灌』の次に予定していた「ライフワーク」でした。しかしそれもいまは醒めた「夢」、資料も先日半分は捨てました。あとの半分は未練がましさ…かつて志したという、思い出の一品?

 さて挑みだした次の小説のために動き出して5日ほど経ちました。机の周りに積んである本を見ると面白いです。新たに記憶するのではなく、かつて積み重ねて大脳に刻んでいたもろもろを引き出すのは海馬の機能とは少し違うので、それを頼りに執筆をするのですが、書いたことを校閲し検証するための資料を取り揃えておくわけです。 国語辞典、漢字辞典をはじめ辞典の類はもちろんのこと、プリントしたウィキペディアの記事、新聞の切り抜き、はては参考になる写真までが積まれることになります。
 いま自分の横にあるもの、『野山の木』、『きのこ』、『こけの世界』、『山菜』、『秋の花』、『植物名の由来』、『先端医療講座』・・・これらは最初に創った登場人物関係図とプロットから導き出された「資料」です。また1か月以上、「老いに追い詰められた自分」と戦うことが出来そうです。
 これを「逃避」ととらえるか「挑戦」ととらえるかは自分次第です。
 「老いの挑戦」に関してようやく気付いたことがあります。「他人の失笑」は気にしないこと、がそれです。だいいち、その「挑戦」の目標は、他人様が評する「結果」ではなく、「自らを鼓舞する日々自体」にあるのですから。

 手元に「高齢者割引乗車証」という市役所発行のはがきがあります。閉じこもらずに出かけてくださいというのです。
 私はいま、ほとんど市内に限定してですが、車を運転しています。ですが、もう少し経ったらそれも止めて、免許証を返納するつもりです。家内が不便をするかもしれませんが、公私の安全のためです。
 サッシ戸を開けたら、入って来た風が完全に秋でした。
 私の方はとっくに「秋」に入っていますが(^^♪
 「さて、少しあるいてきましょうか」 

 

     「伊豆」が始まった街

   温暖な気候、綺麗な空気、体に良い温泉、その全てが第二の人生を可能にした環境でした
  

 
comments
こんにちは。
朝起きて、いつもの自分に、ホッとする。
まるで俳句のような韻。
60代70代へと、そのような感慨を持つのでしょうか。
わたしもいつか、行く道。
心しておきたいと思います。

季節は、秋になりましたね。
台風は発生しても、もう、日本には来ないでしょうか。(^_^;)
2018-10-09 13:27:11 | [編集]

942. 蛙声爺 さん
こんにちは。
いつもありがとうございます。

「若い」って言葉、かなり面白いものだとブログを始めてから気づきました。世間での「絶対的若さ」と「相対的若さ」の両立でしょうか。
80代の人に私は「まだお若いので」と励まされ、その私は、還暦間近の人に「若いっていいな」などと心の中で思ってしまうです。きっと還暦の人は「本物の老人かな、これで」などとアラフィフあたりの人を羨むのでしょう。17歳の女子高生から見れば「25なんておばさん」でしょうし(^^♪。
昔ナショナルの松下幸之助は「青春とは心の若さである」と言いましたっけね。
もう何も起きて欲しくない災いですが、今度の冬は豪雪ですか、もしかしたら、困りましたねぇ、天変地異。
きょうもまた、そして明日も無事でありますように。

2018-10-09 14:40:51 | [編集]

このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018-10-11 15:01:48 | [編集]

944. 蛙声爺 さん
鍵コメの方、お気遣いありがとうございます。不自由はそのままですが、比較的元気にすごしております。
2018-10-11 16:54:41 | [編集]

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蛙声爺

Author:蛙声爺
文芸同人誌編集をしています。
考えるフクロウが理想。
木内光夫のHPもよろしく。

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