FC2ブログ

蛙声爺の言葉の楽園

. 短文から妄想の世界を歩くと


 例えばこんなシーン。ママが具合が悪くてパパが料理をしようとしています。どうやら作りたいのは残り飯を使った炒飯らしく、生意気に中華鍋を火にかけ油をたらし、いままさにご飯を炒めようとしたときです。ママの注意が聞こえました、『たまごからだからね』と。「なんだよ、卵無いのかよ」とパパは「買いに行くのは面倒」と俄かコックをさっさと諦めました。ママが冷蔵庫の『卵空だから』と言ったと勘違いしたのです。じつは卵から炒めはじめてね、という意味だったのでした。ちなみに調理の仕方は人それぞれなのですが、ここの奥さんは卵を先にするタイプの人だったのですね。いずれにせよ注意が短すぎるのが原因です。

 親子で小さな工場をやっていました。超零細企業です。親父は心労がたたって寝込みましたが工場が心配でたまりません。そこで或る朝息子に「俺、今日は行くから」と電話しました。息子の返事は『とうさんだからこなくていい』でした。金策間に合わずにいよいよ倒産かと親父はしょげました。本当は息子、『父さん、だから来なくていい』といたわっただけなのでした。
 玄関から娘が入ってきました。母「お帰り、もういいから」、娘『帰れって何よ、離婚認めるって言ったじゃん』の世界ですね。もう少し長く会話しましょうよ、親子だからこそ。

 ではここでひとつ遊びます。「はやくつみなよな」と仮名入力したとします。少し想像しただけでも3つのシーンが出てきます。ちなみに「早く」は一緒でしたが。畑で姑が嫁に『早く摘みなよ菜』、運送屋が倉庫でフォークリフト担当に『早く積みなよな』、ヘボ将棋の相方がヘボに『早く詰みなよな』。日本語はかなり面倒な言語かもしれません。 


 一昔前は電報がかなり活躍していました。誤訳の例文で有名だったのは、『○○シンダイシャタノム』でした。解釈は2つで「死んだ、医者頼む」と「寝台車頼む」でした。当時生意気だった私は、死んだのに電報で医者を頼むの? 「シニソウ」なら解かるけどと難癖をつけたものです。心肺停止は素人でも判定できて、一般人この段階で「死んだ」と言っていますが、正式には医師が死亡確認をして「死んだ」なのですね。ですからこの例文、必ずしも変ではありません。新幹線全盛の時代になり、少し前「寝台車」なるものが無くなったと聞いたような気がします。結論としてこの例文も、たぶん死んでますね。

 妄想の失敗例を1つ。『おしっこしにくい』がそれでした。「オシッコしにくい」が1つ目で、穴の開いてないパンツなのか、寅さんいうところの男のスワリションベンなのか? 前立腺肥大の場合は「オシッコ出にくい」の方が適切なように思えますし…。2つ目の「お引越し憎い」はマニアックすぎて、小中学生がお友だちと別れるのが辛いというシーンが浮かぶだけでした。

 長編小説が脱稿したら「ずいぶん暇になったな」とからかわれそうですが、日本語の難しさみたいなものを感じた次第です。
 いえ、「難しさ」というより、日本語における同音異義語の氾濫やそれに対応するための誤変換というデジタル機器の苦悩を見る想い、さらには文章における漢字の役割などに想いを致したと言うべきかもしれません。
 




    もう起きてたの

    「もう起きてたのか」 早朝散歩で見かけたアオサギ 「お前ずっと独りだな」
  

  
 

comments
. コメントの投稿
  • コメント
  • パスワード (入力すると、コメントを編集できます)
  • 管理者にだけ表示を許可する
この記事のトラックバックURL:http://aseijiiji.blog.fc2.com/tb.php/714-6cebecdb
. プロフィール

蛙声爺

Author:蛙声爺
文芸同人誌編集をしています。
考えるフクロウが理想。
木内光夫のHPもよろしく。

. 最新トラックバック
. 2015年9月26日からのご訪問
. フリーエリア
. フリーエリア
. 検索フォーム
. リンク
. ブロとも申請フォーム
. QRコード
QR