蛙声爺の言葉の楽園

. 70歳まで働いてもらいたいとは言うけれど(2)


 60歳、65歳で一区切りを終えた人が、まったく別の会社、職種、職場に対応することは現実問題として厳しいでしょう。本人の自己評価はこの際別にして客観的にみれば、知力、体力、気力の減退は否めないからです。最近見た何かの記事には、『40歳を超えた従業員からは新しいものは何も出てこない』などという経営者もいるくらいです。まして60代においておやということになります。一方で、人手不足解消の一助として高齢者にも働いてもらう必要があるという政府。ではどうしたら可能なのかという話になります。

 全産業的ではなく部分的な効果しか期待できないかもしれないのですが、『終身雇用』の復活が考えられます。 定年まで「現職」だった仕事なら冒頭の「障害」を最小限に抑えられるからです。(1)で町工場の熟練工を例に出しましたが、熟練度が命という「作業」を中心とする部署については特にお勧めだと思います。何も労働契約の基本方針を全社一律にする必要はないのです。
 もう一つ確認しなくてはいけないのは、ここにいわゆる「終身雇用」に「年功序列」という制度をくっつけないことです。そもそも「定年」の必要性は、高齢になり労働価値が低下しているのに賃金が高い、また地位まで高いので後進のやる気を削ぎ更新に支障が出るという弊害のせいでした。「愛社精神」や「全社団結」、「技術、伝統の承継」など高度で精緻な産業の発展に貢献したにもかかわらず国際化の中で衰退したこの『終身雇用』の復活。それはもしかしたら、「時代に逆行」ではなく、「時代の寵児」になれるかもしれません。

 新・終身雇用を可能にするには、「基幹賃金A」をきめる「作業」を絞り込む必要があります。そしてこの部分は終身保証しなければなりません。言い方を換えれば、一般定年後の報酬額はこの部分だけでいいとするのです。物価スライドなどは当然必要になります、なにせ半世紀にもなろうかという長丁場なのですから。就職から定年までの一般期間の「総合賃金T」は、このAに労働基準法が定義している「賃金」の中に入るものでA以外のもの「賃金B」を 加えることになります。例えばですが、役職手当、皆勤手当、特技・資格手当、家族手当、超過勤務手当。持ち家などで会社から住宅の貸与などを受けていないのに均衡上一定額が支給されるという意味での住宅手当もこの中に入ります。
 
 実はこの考え方に近いものが最近訴訟として問題になりました。原告の主旨は「同じ仕事をしているのに非正規雇用者の賃金が低いのは同一労働同一賃金に反する」というものでした。しかしこの「同じ仕事」の中身を詳細に分類・検討しないと「反する」かどうかは判定できません。原告の主張は上の「基幹賃金A」に当たるものが正規社員に比較して低いと限定する必要があります。役職が無い、所定の家族が無い、資格も特技もないなど、そういう人が「同じ仕事」なのに自分より高い賃金をもらっているのは可笑しいと訴えているかもしれないからです。きっと裁判所は、給与内容を精査すべきと指示すると思います。

 すこし広げすぎたかもしれませんが、要するに慣れ親しんだ環境と作業で70歳まで「現役」でいられるような制度作りが必要でしょうといいたいのです。所定の高齢者を一定期間雇用すれば助成金を出すというやり方だけでは、助成対象労働者を一定期間後に取り換えるだけで儲けようとする経営者を喜ばせるぐらいで、根本的な解決にはならないと思うのです。
 またこの考え方は、新卒者との労働契約だけでなく、中途採用や配転の場合でも同様です。
 長々と失礼しました。
 



      水車


        水車は自分の力で回っているのではありません  

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蛙声爺

Author:蛙声爺
文芸同人誌編集をしています。
考えるフクロウが理想。
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