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蛙声爺の言葉の楽園

. 自費出版は終活の一里塚(3)『孤往記』


 あと四か月ほどで六十七歳になるという晩秋に、自費出版をした二作品を「ネットで販売できる途があるがどうか」という話が入って来た。結論から言えばペンディングにしたのだが、「制作」担当者が私の関連作品を縦書きで読むためにと、ホームページ蛙声庵からデータをとってPDF化したものを寄贈してきた。二百六頁に及ぶ『弧往記(こおうき)』がそれだった。作者のくせに恥かしいのだが、同人誌『岩漿(がんしょう)』に連載という形をとっていたせいで、全編を通読するのは初めてだった。公休日に五時間を費やして精読した私は、知らず知らずのうちに「校正」もしていた。「自伝ではないが、たしかに私は小説の中に居る」とかつて語ったこの作品。いつしか一読者として目頭を熱くしていた。「何だ、この感覚」。私の人生を決定づけた青春時代が否応なしに蘇えった。

 真直ぐな主人公が味わった孤独、囚(とら)われた悩み、求めた人のぬくもり、突き進んだ遠い夢。もしかしたらこの奥底にあるものは普遍的なものかもしれない。我田に水を引いた私は、第三の上梓を決意した。
 もともとこの作品は、親族、友人知己など縁(えにし)を結んだ人たちに遺すメッセージとして考えたもので、『岩漿』初出は平成十一年、連載の終わりは平成二十三年、東日本大震災の春に当たる。こじつけではなく、実は『岩漿』もこの年で終焉を迎えると思っていた。それから丸三年の春、小説『孤往記』がネットを使って一つになった。

 こうしてみると、上梓に向けた行為は進めていても、理由は区々だが躊(ためら)いがあって、歳月がいたずらに過ぎていったようにも見える。もう一つ。この障壁を乗り越えるための「引き金」は、比較的小さな「きっかけ」という点も共通である。このカミングアウト的なエッセイを書き終えて、ふと思った。私の上梓は「終活」の色彩を帯びていると。
 


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 おびえて縮こまった子犬にも見えるこのパン。この程度のものさえ口にできなかった青春という名の過去がある。
 『孤往記』(平成26)が載ったネットはAmazon。私にしては珍しい一里塚になった。


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蛙声爺

Author:蛙声爺
文芸同人誌編集をしています。
考えるフクロウが理想。
木内光夫のHPもよろしく。

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