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蛙声爺の言葉の楽園

. 自費出版は終活の一里塚(1)『小説太田道灌』


 『小説太田道灌』の場合、創作自体ではなく本にする動機に限って言えば、死後に遺すものが欲しかったからと断言できそうだ。対物で済んだが、交通事故に遭(あ)った。以後、運転中に対向車と正面衝突する可能性に怯(おび)え始めた。いつ死ぬかもしれないのに、自分には生きて来た確かな証が何もない。まだ「息」をしている間にできることはないのか。今にして思えば特異な心理状態だった。しかし契機はともかくとして、上梓(じょうし)するための「版下」作りに没頭している間に、「還暦の記念に」という健康的な動機付けに変化してはいる。素人が自分で未熟ながらも本を編むのだ。多少の異常性は必須条件かもしれない。

 同人誌は、言うなれば仲間の作品を載せるものだ。文章の巧拙や内容の誤謬(ごびゅう)についても、多少の甘えは許される。だが、上梓となれば違う。歴史に絡むとなればなおさらのこと。刷り上がり、図書館に寄贈し、友人知己に送り、ネットで販売し、さらには書店に並べたあと、戦々恐々とした日々が続いたことを告白する。
 結果は、本は完売し、数十通の批評・感想のお便りを頂戴した。太田道灌の末裔の方々との誼(よしみ)も生まれた。望外の喜びとはこういうことだろう。

 しかし、道灌研究家の方々から拝受した資料の数々は、筆者の身を竦(すく)ませるには十分なものだった。唯一の救いは、それらが私の『小説太田道灌』執筆時には書籍化されていなかったという事実。逆に言えば、当時存在していれば、あれほど史料収集に苦労はしなかっただろう。いずれにせよ流通させてしまった本は、銃から発射された弾丸と同じなのだ。
 単行本『小説太田道灌』は私に、上梓する喜びと怖さを同時に教えてくれたことになる。



      太田道灌

       神奈川県伊勢原市 太田道灌像

 江戸城を築城した稀代の軍師太田道灌は、主君の命を受けた自らの部下の手により、この地で暗殺される。
 300冊刷ったこの本『小説太田道灌』(平成18)は全て配本。私のホームページ(左最下段)に全文PDFがあるのみ。



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蛙声爺

Author:蛙声爺
文芸同人誌編集をしています。
考えるフクロウが理想。
木内光夫のHPもよろしく。

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