蛙声爺の言葉の楽園

. 愛子とシゲルの『メアリと魔法の花』


『愛子、エンドロールを見たあとの感想を一言』
「うーん、まあ。シゲルここ入ろうよ、ケーキおいしそうだし」
『甘いものねえ、頭が疲れたってことだな、ご感想受け取りました、まかせるから何か頼んできて』
「その台詞いただきぃ、ここシゲルおごりね」 
    *ということで、『メアリと魔法の花』を映画館で観た二人はすぐそばにある小洒落た喫茶店へ。

「どうして独立1作目を魔女にしたのかなぁ、元ジブリがスタッフの8割ってことでしょ、観に行く私たちも元ジブリの作品と言うことで興味があったんだし不思議だよね、この選択」
『やっぱりそこか。宮崎駿の【魔女の宅急便】が強烈に残っている観客には酷だよな』
「それはないだろうって感じじゃない?」
『米林宏昌監督もこのプランを聞いたとき驚いたらしいよ。それでも撮ったっていうことは或る種の自信かな、違うものを創って見せるという。でも僕は仕方がないと思うんだ。興行つまりお金の責任を背負って長編アニメを創るの初めてな訳だし、製作側の意向に沿うしかないよ。ジブリという看板を掲げられない厳しさというのかな』
「なるほどね不本意ながら、プロとして積極的姿勢に転じてか。たしかに米林監督の【借りぐらしのアリエッテイ】も【思い出のマーニー】も職人芸を出せば良かっただけだと言えるかも。それにしても今日の観客、高齢者ばっかりで驚いた」
『平日の12時の上映じゃ女子供はキツイでしょ、それと期待が大きいのかスクリーン2つ使って1日10回近く上映するわけだろ、それよりこれ、大ヒットの予感する? 愛子的にはどう』
「はははは、君は日テレかい、東宝かい? だいじょうぶだと思うな、3連休から、すぐ来る夏休みと」
『いやいや、カレンダーじゃなくてさ、作品として。メアリは女の子だから是非聞きたい』 
「何をやってもうまくいかないし容姿もいまいちなメアリ、男の子も魔法待ちで、わたしにぴったりってか」
『そこまで曲げてとるな、声の杉咲花は可愛いぞ』
「ごめん。前の2作品はどちらかというと静的な、詩情溢れるものだったので大人は喜んだでしょうが、子どもたちはそもそも動的なものに慣れ親しんでいるので感受しやすいんじゃないかしら。その分、元ジブリの作風目当ての大人の口コミは期待でないかもしれないけどね。ちっちゃい子どもには大人がついてくるし、プラマイで中ヒットはいけるでしょう」
『ジブリで中ヒットなら興収数十億だよね。個人的にはヒットして欲しい。この監督が本当に創りたいものを創れるように。最初が興業側の期待に沿えないと、金も出すが口も出すという鎖がついてきて思うように創れなくなる。邪推はしたくないけどさっきエンドロール見てたら製作委員会に名を連ねた会社・団体が20近くもあった。もしだよ、みんながみんな、こうしてほしい、これはやめてくれ、こういう話にした方が客に受けるなどなど口を出したらロクなことにならない』
「まるで父親だね、シゲルは(^^♪」
『愛子のいうこどもが楽しめるという視点じゃなくてね、正直に言うと魔法のエンドア大学に入学した頃から観ているのが辛くなってた。無用な説明やガタガタ、ドンパチ、びゅんびゅーんに陥っていて、自分なりに創作意図を見つけ出そうとして興味を繋いでいたんだ。そこで見つけたのが、魔法の花はじつは、心を失った科学技術のことなんじゃないかということ。大きい方では原発から核兵器、小さい方では遺伝子組み換え、染色体いじり、再生細胞、人工知能なんかだよね、本当に人間のためになっているんだろうかという問いかけ。もしかしたらこの作品にはそういうメッセージが含まれているのかもって・・・』
「もののけ姫のときの宮崎監督も何か言ってたよね、確か。子どもはすでに何かを感じている、いま具体的にそれが何かは分からなくてもきっと後で解かる。子供たちに何をどう見せるかについて、ぼくたちは責任があるんじゃないか、だっけか」
『さすが愛子だね。おとなもそれを感じて鑑賞してもらえば納得がいく作品になるな、元ジブリスタッフの処女作も』
     *しばしの沈黙。ここでケーキとコーヒーを楽しんだ模様です。

『そう言えば久しぶりだな、デートみたいに外で会うのは』
「気がついた? いつもは狭い部屋でDVD、しかも観てるのがお子様アニメ?」
『映画館以外で会うのも、狭い部屋でアニメ以外の恋愛ものっていうのも、それはそれで問題だろ?』
「どこが? どう問題?」
『そうそうメアリが悪の校長や博士に捕まってしまったピーターを助けに戻るってシーンあっただろ』
「助けるって約束したって言ってね。それがどうしたの?」
『あの場面で、なぜか【走れメロス】を思い出した』
「はいはい、友は信じろってか。了解。ところで唐突ですけど、スタジオポノックのポノックって何?」
『ああ米林監督と元ジブリのプロデューサー西村義明が立ち上げた事務所という会社名の』
「またまた分からん名前を付けたもんだ」
『ちらっと何かで見たんだけど、真夜中の[午前零時]の意味らしい。ゼロからの出発ってことかもね』
「さすがシゲル。これさっきのお返しね。前にジブリの意味も聞いたっけね」
『ああ、サハラ砂漠に吹く[熱風]ね、有名な話なんだけど宮崎監督は[風]が好きなんだよ』
「そうなの。あ、じゃもう一つ。脚本のタイトルところに米林監督と並んでいた坂口理子ってどんな人」
『サトコじゃなくてリコな。ジブリつながりで言うと、高畑勲監督と【かぐや姫の物語】で共同脚本してるライターだよ』
「べつにテストしてるんじゃないからね♪ いろいろありがと、先生」
『そんなに持ち上げなくても、ご馳走しますよ、出ようか、そろそろ』
「こんどはさぁ、映画抜きで逢おうよ」
『たとえばどこ行くの』
「動物園とか。あははははは」


   
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蛙声爺

Author:蛙声爺
文芸同人誌編集をしています。
考えるフクロウが理想。
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