蛙声爺の言葉の楽園

. アスファルトの上に咲く


 ほんとに近くの、いつもの道
 ある朝、ガードレールの下のアスファルトの割れ目から
 この、名前も知らない花が顔をだしているのに気づいた

 和の野草とは雰囲気が違う
 言ってみれば「異邦人」の雰囲気だった

 しばし対面した後で「あ、そうだ」と膝を打った
 振り向けば、かつて収容千人超を誇った観光ホテルがいまも寂しく聳え立っている
 たしかここの板前さんだった人
 花が好きで道路の川沿いに鉢を並べ
 四季折々の花で、道に彩を添えていた

 かたいことを言えば道路占用許可が要るケースだが
 たぶん誰一人として責めたりはしていない
 水をやったり剪定をしたりしている彼と談笑している近隣の人たちを
 何度となく見かけている
 もちろん私も心温まる想いの笑顔で

 ところが花の鉢がある時を境に減り始めた
 彼の死を耳にしたのはだいぶ経ってからだった
 花と彼を愛でた人たちの持ち去り行為の意味は、どうやら「形見分け」だったらしい

 「七月のお盆が近いからかい?」と
 シャッターを切る前に、目で聞いてみた
 写真が少しぶれていたとしたら
 それはきっと二輪のこの花が、風のせいにしてうなずいたせいだ  



     花よ、君の名は

        目を細めて見てみると。ふたつの目でニコッ


comments
716. こんばんは うづら さん
蛙声爺さんのお人柄でしょうか。
やさしい視線。
『異邦人』
日本の言葉のウツクシサ改めて感じました。
ありがとうございます。
2017-06-28 20:40:03 | [編集]

717. 蛙声爺 さん
うづらさんの「ものを見る目」も優しいですね。
読んでいてこちらも和みます。

近頃は、きらびやかな洋花よりも、厳しい環境下で頑張って花を咲かせる野草が好みになりました。
「とし」のせいですかね(^^♪
2017-06-29 06:18:29 | [編集]

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蛙声爺

Author:蛙声爺
文芸同人誌編集をしています。
考えるフクロウが理想。
木内光夫のHPもよろしく。

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