蛙声爺の言葉の楽園

. 求職者も面接担当者をじっと見ている


 或るブログで、面接に行こうとした際に急だったのでパソコン打ちの履歴書でいいかと照会電話をいれたという話をしていました。読後に何のスイッチがどう入ったのかは解かりませんが、私の中で過去の面接経験が鮮明な形で蘇ってきました。その中で死ぬまで忘れられないという強烈な3件をご紹介します。それは人間対人間の「戦い」でした。

 作業服を着た中年の「面接官A」に『手を見せてみろ』と言われたので左手を差し出したところ、数秒後に掌をかなりの強さで叩かれました。『当社をなめてんのか⁉ こんなヤワな手で何ができるというんだ。職を転々としてる駄目さ加減がこの手に出てんだよ!』もう1人の面接官Bが目をぱちぱちさせて固まっているのが印象的でした。私はBの心情を察して怒りを抑えました。Aは勘違いも甚だしいのです、採用するまでは求職者とて「社員でも部下でもない対等な人間」なのだということを忘れています。「なにさまのつもりだよ」と私は静かに席を立ちました。Bが交通費が入った袋を伏し目がちに差し出します。東証1部上場自動車会社の期間従業員の面接。中身の500円が私の、この会社につけた「株価」でした。この程度の人に人を選ばせている時点で底が知れていると想ったのです。上野の街に吹いていた風がかなり冷たかったのを覚えています。

 静岡のリゾート分譲地管理会社の面接を受けたときのことです。職種は「宅地建物取引主任者(名称は当時のもの)の有資格者で営業マン」でした。『へーえ、これを見るとけっこう頑張ったんだな』褒めている顔ではありませんでした。横の2人も履歴書を読み始めましたが、ニヤニヤとしだします。此処で一番偉そうな人が、その笑いの理由を教えてくれました。『この分譲地、買うのは皆さん金持ちなんだよ。何十年もこうして貧しく頑張ってきた君が、そういうハイソな人たちに平常心で接するとは思えないんだよ、悪いな・・・』3人の嘲笑気味の口元が印象的でした。この後5分ほど彼の口から「面接官」3人の高学歴自慢が吐かれます。最後に私の履歴書が彼の手を離れテーブルの上を少し滑りました。私にできたのは唇を噛むことだけでした。心が嘔吐しそうになったのです。

 東京に本社がある不動産会社でした。私が受けたのは横浜支社。支社長には鄭重に断られました。会社が望む身元保証人を私が付けられないと知ったからです。人間は1人で生きているわけではないのですが、「独り」で生きなければならない境遇というものがあります。2、3日経った後でした。『再面接に応じていただけませんか』という丁寧な電話が来ました。なぜ?という興味も手伝って支社を訪れると『失礼をしました』と1転「採用」だと言うのです。身元保証人はと念を押すと、何の収入もない母の「私が産んだ」的な身元保証でいいとのこと。正直なところ仰天しました。理由は後日判明します。「県立高校を経済的理由により半年で任意退学。4年後文部省大学入学資格検定合格。翌年大学の通教部(法律学)に入学し4年後に卒業。無謀にも司法試験を受験しつつ職業欄的にはアルバイトばかりで浪々の歳月。結果論文式まで辿り着いたがそこで終焉」という履歴を、本社にいる支社担当重役が拾い上げてくれたのでした。1カ月後重役は笑顔で言いました、『調査はさせてもらった、履歴書に1点の曇りもなかったよ』と。いただいたお酒の味は最高でした。 



         人間の根っこってなんだろう…

       或る木の根



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comments
すみません、ゆりかごの歌の窓、と申します。
お兄様の木内さんのブログ記事内にリンクが張られていましたので、参りました。
ご挨拶もせずに、申し訳ございません。

ご訪問をありがとうございます。

三者三様の面接官の態度、初めは読みながらも怒りで体がブルブル震えてしまいました。

このような企業に入社されなくてかえって良かったのではと思います。

人生、至る所に、青山ありなんですね。
善きご縁もある結末に、胸を撫でおろしました。

長々とごめんなさい!<(_ _)>

2017-05-19 10:17:14 | [編集]

685. こんにちは 蛙声爺 さん
お便り、嬉しく読ませていただきました。
兄のブログに訪問していただいてありがとうございます。これからも宜しくお願いします。
若いころのアルバイトは「職種」で26もありました。その中には期間工という立場も入っています。その後も色々でしたが、いい面接経験は1つか2つでした。歳を重ねたいまでこそ、恰好の人間観察ができたなと、前向きな解釈もできますけれど(^^♪
2017-05-19 13:11:06 | [編集]

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Author:蛙声爺
文芸同人誌編集をしています。
考えるフクロウが理想。
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