蛙声爺の言葉の楽園

. 春。動き出した街に


 春3月。ようやく日の出が早くなり朝そこそこの時間に外に出られるようになった。
 土曜日なので日経新聞を買いに近くのコンビニに向かう。往復で2000歩の勘定だ。

 真っ先に出会う「よねわかの足湯」、利用開始時間前なので排水溝だけから白い湯気が出ている。おそらく地上でコックひとつひねれば温泉が浴槽に流れる仕組みになっているのだろう。時間外はその温泉が直接に排水されているのではと推測した。温泉の街らしくていい。伊豆半島で最も温泉井戸数が多いとされる伊東なのに、揚泉してすぐに配管経由でホテルなどに行ってしまう温泉。街全体に湯気がたなびく伊豆熱川や別府、草津などとは趣が違う。これも温泉の温度が45℃から55℃と比較的低いためで熱損失を惜しむ工夫なのだから仕方がない。排水溝のグレーチングから出る湯気なのでさすがに胸いっぱい吸ってみることはできないが、これだけでも湯の街の雰囲気は感じられる。

 しばらく進むと、由緒は正しそうなのだが小さな神社がある。竹箒で地面を掃く音。チラッと見ると痩身の好々爺然とした人が脇道に散らかった桜の花びらを集めている。うっかりだが「朝の挨拶」を忘れた。「ああいう人に日々護られているんだ神社」と、通り過ぎて数分経ってからしみじみと思った。神社の周囲はきっと、空気まで清しくなるに違いない。

 コンビニで新聞のほかに色の濃いどら焼きを2個買ってから家にもどり始めた。同じ道は避ける。そよ様の庭の木の花や道路脇のプランターにひしめく花を観賞しながら歩を進める。こんなときの私の「仕事」は名前を思い出すことだ。咲いていたのは10種類。ほぼ半分しか出てこなかった。もっとも名前をしらなくても綺麗はきれい。これは都会ですれちがう女性でも同じ理だろう。

 松川沿いに出て、河畔の緋桜をじっと見る。8分咲きか。ほぼ満開に感じられる。少し離れたところに2本ある染井吉野の花芽はまだ固いので、種が違うのだろう。年配の女性が路地から顔を出したが、ちょうど私がデジカメを取り出したのでかどうか、すぐに引っ込んだ。
 桜はすごい。蕾の間でも人々は期待を抱き、少しでも開花すれば大騒ぎになる。 満開で「雪積む木」、舞って「花吹雪」、川に落ちて「花筏」、地に落ちてさえ積雪初めに例えられる。今朝見た種は色が色だけに「雪」のイメージはないが、そのかわりに艶めかしさがただよう。柄にもなくしばらく花の下にたたずんで楽しんだ。
 いよいよ待ちに待った「春」だ。 


 もしも蟻になったなら花びらに乗って海に出る。アリえないけど。

       桜2
         * Q「水鳥は何羽いますか」*
 


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comments
654. ぴーこ さん
いよいよ春到来ですね。
やはりウキウキしますし何処かへ行きたくなります。
お近くに温泉施設があるのですね。観光地で賑やかなことでしょう。
桜も間もなくですね。桜に関する季語が風流で、俳句をやっておりましたから「花筏」なんて大好きです。
千鳥ヶ淵の花筏は見事です。私も花びらに乗って何処かへ流されてみたいです。
2017-03-04 19:52:37 | [編集]

655. 蛙声爺 さん
「田舎」の魅力は自然がいっぱいということでしょうね、首都圏で育ち勤務もしていたので、ここの素晴らしさが身に沁みます。問題があるとすれば尖端の文化から遠いことです。でももう立派な?老人ですのでここで十分でしょう(^^♪
 記事の途中でぬけて、かみさんと松川湖に向かい8000歩ほど歩きました。何か所かのパーキングはかなり混んでました。やっぱりみなさん春だとウキウキするようです。
 ぴーこさんもより一層のアウトドアですかね。
 ぜひずっとお元気でお出かけくださいますよう。
2017-03-04 21:26:36 | [編集]

656. こんにちは~(^-^) やまざくら さん
まぁ~!!もう桜が見られましたね♪♪

とっても素敵な景観で、うっとりしました。

これから春になるのが待ち遠しいです!

素敵な桜、ありがとうございました(^o^)/
2017-03-06 11:03:51 | [編集]

657. 蛙声爺 さん
なにしろハンドルネームが『山桜』さんですから、桜大好きですよね。今年はこれから4月5日までぐらいの間、文字通りの「桜祭り」、大いに楽しみましょう。
少しならですが、屈託も吹っ飛ばせますよ、きっと。
2017-03-06 17:30:03 | [編集]

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Author:蛙声爺
文芸同人誌編集をしています。
考えるフクロウが理想。
木内光夫のHPもよろしく。

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