蛙声爺の言葉の楽園

. 月光と日の出を物語りして




       月光になぞらえて


         払暁の闇、せめて月光になぞらえて
        磨かれた岩の光沢が、わずかに木々を映して
         爺の戯れを喜んでくれた
 
        
       
    







       日出ずる
    

          日が昇るとき、かすかに音が聞こえる
         沈むしか道の無い、吾のおののきの
          それでも沸き立つ血潮の流れ
       
   



        

. 雲には何も問わない

 


       朝陽

        「鏡」さえ手にすれば人も、独りで二人になれる
        いま在るがままの自分と、それを見詰めるもう一人の自分と



     朝陽に訊く
     輝き続ける自信はあるのか

     夕陽に訊く
     これきりだという不安はないのか

     雲には何も問わない
     泣いたり怒ったり消えたりと自在だからだ

 

. 頭の中の海の馬



            海の馬


    確認してしまうことの恐怖
    勇気をふりしぼって再開した小説

    初日、400字詰め10枚執筆
    二日目、 前日の原稿を読み返したあとで5枚執筆
    三日目、15枚を読み返してから6枚
    四日目21枚を読み返して6枚
    五日目も同様に27で9、六日目36で15
    きのうは51枚の筋を確認して12枚を書き足した

    創る作品は600枚近くのもの
    この調子で行きつ戻りつ進んで200枚300枚になったときは
    どうなる
    かなり、辛い
    
    仕事上で前頭葉を強打すること3回
    高齢による老化に委縮が足されたのか頭の中の海馬

    これは自分との戦いだと知った
    かつての「自分」は死んだのだ
    いま続けている執筆は「リハビリ」なのだ
    そう思った

    頭の中は他の誰にも見えない
    記銘できない
    自分だけが分かっていることの恐ろしさ
    それでなくとも
    よく見えない
    ほとんど聞こえない
    噛めない
    うまく話せない
    ・・・
    
    耐えられるのか本当の死が来るまで
    つくれるのか笑顔
    分からない
    でも今日もまた書く
    いま居る自分自身のために。    
 

 

       また咲いた

                咲きたい。その意志の力の強さを感じる

 

. 真っ赤なカレンダー


   土曜日が来た
   明日は日曜だ、カレンダーの数字が赤いから
   で、その次は月曜
   たしか月曜から金曜までを平日と言った。仕事というものをした気がする

   あの日、目を疑った
   変だ。月曜なのに数字が赤い
   あわてて目を滑らせると、土曜まで
   いや次の、その次のも、赤だらけ
   「定年」て、そういうことだった

   耳元で誰かがそっと教えてくれた
   「黒いマジックを買いなさい」
   そうか自分で、平日を黒く塗ればいいんだ
   『何だ簡単じゃないか』
   可笑しくて涙が出た

   無理だと知って、また笑った
                                         


       「元気出そう」って言葉いいよね、無いものは出せない道理だから、有るんだよ

      雲
         木の葉につかまろうとしている雲の哀しさ 



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. そういう齢。こういう私。

 


         『そういう齢。こういう私。』

     血糖値対策で5千歩以上歩いてから
     抹茶ソフトを食べる癖
     いつも並んでそうするから顔が見えない
     もう三十年も、一緒に居る

     一色の壁、パソコン画面、干したワイシャツ
     真っ白なものを見てしばらくすると
     うっすら黒いものが飛び始める
     昔の暗い記憶たちが、消えたばかりなのに

     ちょっと待ってと突然とめた
     「木漏れ日が遊ぼうと言ってる」
     えっ? と首を傾げ固まる連れあい
     近頃はこのすれ違いが、じつに楽しい

     メニューのトンカツから目が離れない
     なのに「豆腐ハンバーグの和膳ね」
     歯があと8本しか残っていない
     ふとO・ヘンリーの、「最後の一葉」が浮かんだ  
     



       「いっしょに遊ぼう」と、ふわふわな感じで木漏れ日に誘われた

      木漏れ日遊び



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蛙声爺

Author:蛙声爺
文芸同人誌編集をしています。
考えるフクロウが理想。
木内光夫のHPもよろしく。

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